花咲かじいさんのイトスギの話

 玉川学園駅北口前の通りから郵便局に向かう坂道に入ると、右手にイトスギ(『樹木たんけんマップ』の11)が天を衝くように立っています。この木の持ち主、造園家の秋山さんにお話を聞きました。イトスギのこと、樹木の生存戦略、このまちの地層、サクラの枝を配る花咲かじいさんの活動まで、お話は縦横無尽に広がっていきます。

 さあ、以下↓のお話をどうぞ!

■育てやすくて存在感のあるイトスギ

 このイトスギを植えたのは30年ぐらい前。4、5本植えたなかで、この1本だけ残っています。植栽にも流行があって、その頃はイトスギの苗がわりと流通してたんですね。以前はまちのあちこちにあったのですが少なくなり、現在は第一住宅(三丁目の奥)にもう1本あります。

 庭に植える木としては、けっこういいんです。手入れのいらないおとなしい木だから。植えてから30年で今12、3メートルくらい。細く高く伸びる樹形が特徴的です。成長しても横に広がることはなく、30年間まったく何もしないのに形を保っていて、世話はとても楽ちんです。病気にも害虫にも強く、強風が吹いてもうねうねとしなって風を受け流せます。

 映像などで、ヨーロッパの街道にイトスギがずらりと並んで立っているのを見るでしょう? でも、1本だけでも存在感が大きいから複数植えるとうるさいんです。ポツンポツンと1本ずつあるのがいいと、私は思います。

■湿った土地を好むスギ、乾燥地に強いヒノキ

 イトスギは名前こそ「糸杉」となっていますが、実はヒノキの仲間です。スギは日本の固有種で湿った土地を好み、一方ヒノキは乾燥した土地に強い。スギの仲間は沢沿いに、ヒノキやサワラなんかは尾根によく生えています。ウチのイトスギも、地中海沿岸の乾燥地に多い種です。

 植物には水が必要だから、乾燥に強い木は根がどんどん地下に入っていきます。ウチのイトスギもそうですが、根が水脈の中に入ると、急にグッと伸びるんです。同じように何本か植えても、1本は大きくなり、他は小さい。

 縄文杉も伊豆のクスノキの巨木なんかも同じで、何百年も千年も生きているような木は根が地下水脈の中に入ってるんです。生きている間にはものすごい干ばつもあるから、そうじゃないと生き延びられないわけですね。

■木の根は水と酸素を求める

 植物の根は酸素が必要だから、普通は地中深くには入れません。だいたい地下1メートルの中に入っているそうです。だけど、なかにはイチョウやケヤキのように直根がバーッと深くまで伸びるものもあります。

 ヒノキを含む裸子植物は進化史上古い植物群で、多くの針葉樹は枝を切っても芽が出ません。樹木内で栄養を融通する仕組みがまだ劣っているからなんですが、広葉樹は枝を切ってもすぐに芽が出てきます。その代わり古い植物は、寒いところ、険しいところに強い。シベリアのタイガも針葉樹ですね。

■みどりの丘クラブの活動は無駄な抵抗なのか?

 私、このまちのお宅のサクラの枝をいつも花が咲く直前に整理するんです。それで、切った枝をどうぞ持ってってと置いておくと、みなさんがバーッと持っていく。これは想像ですけど、花は持ち帰ったそれぞれの家で咲いて、きっと葉っぱも出ているんです。みんな楽しんでくれて、花咲かじいさんと言っていただいて。それをもう10年ぐらいやっています。

 ここ数年は、若い方が持っていく。植物が少なくなって、若い方にも自然志向、樹木愛好みたいなものが、湧き上がってきてるんだな、って感じています。

 玉川学園をみどりにしましょうなんていうのは、極端なこと言っちゃうと、ほぼ無駄な抵抗の最たるものだと思うんです。でも我々は熱帯のサルの末裔ですから、木や植物に対する親近感を先天的に持っていて、それがなくなることはないんじゃないでしょうか。今皆さんがやってる活動はそういうことじゃないかな。

玉川学園みどりの丘クラブ

玉川学園がみどりの多い楽しいまちであってほしいと願う、植物愛好家、園芸家、ミニ農園主の集まりです。まちの樹木や草花を元気づけたり、植物との付き合い方や近隣のみどりの課題について情報交換したりしています。

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